「体内時計」は3種類ある|行動を定着させることが健康・長寿の秘訣!?

この記事は2018年12月5日サライ.jp掲載記事「「体内時計」は3種類ある|行動を定着させることが健康・長寿の秘訣!?​​​​​​​」より転載したものを元に加筆・修正したものです。

「規則正しい生活をしましょう」という言葉は、健康や寿命に関するほぼ全てのメディアで用いられる言葉です。例えば、「ホルモン分泌が乱れて高血圧になりやすくなる、だから、生活リズムを整えましょう」というのが一般的ですが、この場合、なぜホルモン分泌が乱れるのでしょうか?その一歩踏み込んだ点を突き詰めると「体内時計」というキーワードにたどり着きます。『ノーベル賞受賞で注目!「体内時計」の研究でわかった健康生活2つの原則【予防医療の最前線】』では、体内時計は「時計遺伝子」によって生み出され、血圧、体温、消化酵素や内分泌ホルモンの分泌周期、睡眠覚醒サイクル、免疫反応などをコントロールすることを説明しましたが、今回はそのメカニズムをさらに詳しく解説します。

■体内時計には3種類ある

実は、体内時計と一概に言っても体内時計には「中枢時計」「末梢時計」「細胞内時計」の3種類が存在し、中枢時計を中心とした階層的な指示系統で体内時計はコントロールされています。

体内時計は3種類存在し、中枢時計を中心とした階層的な指示系統を持つ。

体内時計は3種類存在し、中枢時計を中心とした階層的な指示系統を持つ。

・中枢時計

中枢時計は神経やホルモンの濃度をコントロールすることで、体全体の統制を司ります。これは、脳の中でも自律機能の中枢である視床下部の「視交叉上核(ししょうこうさじょうかく)」と呼ばれる一部の領域に存在します。この部位が中心となり末梢時計(後述)や細胞内時計(後述)の時刻調整を行い、全身の臓器のリズム・細胞分裂のコントロールなどが行われます。つまり、末梢細胞を指揮し、全体で強いリズムを形成することが中枢時計の役割なのです。(*1)

中枢時計は光刺激に影響を受けます。時差ボケやシフトワーカーの体調不良の原因となるのは不規則な光刺激が中枢時計を狂わせている結果なのですね。

中枢時計の中心は脳の視交叉上核(ししょうこうさじょうかく)に存在する。同部は光刺激でリセットされる特徴を持つ。

中枢時計の中心は脳の視交叉上核(ししょうこうさじょうかく)に存在する。同部は光刺激でリセットされる特徴を持つ。

・末梢時計

体中のそれぞれの組織において、末梢時計が存在します。これらは中枢時計の調整を受けながら、それぞれ異なるリズムを刻むのです。例えば、成長ホルモンは夜間に多く分泌される、体温は夕方にピークを迎える、運動能力は夕方にかけて高くなる、などが挙げられます。中枢時計が光でリセットされるのに対し、末梢時計は食事や運動など光以外の要因の影響も受けます。例えば、マウスの活動期にエサを与えず、非活動期の時間帯にエサを与え続けると、末梢時計は中枢時計と関係ないリズムを刻むようになります。この時、中枢時計と末梢時計のリズムが異なる二重構造となってしまうと高血圧や糖尿病、うつ病などになりやすくなると言われています。(*2)

・細胞内時計

「テロメア」は各細胞のDNA染色体の両端についている構造物で、その役割は靴ひもの端にあるカバーと似ており、染色体を保護する役割を担っています。細胞は生まれた時から分裂を繰り返しますが、そのたびにテロメアが短くなります。テロメアがなくなった時、細胞の分裂は停止し、老化の一因となると考えられています。(*3)このテロメアの長さを保つために、「テロメラーゼ」という酵素が働きます。テロメラーゼの働き次第でテロメアが短くなって早死にしたり、逆にテロメアが長くなって長生きする一因といわれています。例えば、がんが無限に増殖できるのはこのテロメラーゼという酵素ががん細胞では活性化していて、無限の寿命を得ているのです。

■細胞内時計の寿命遺伝子も体内時計の影響を受けていた!

通常、テロメラーゼの活性は体内時計遺伝子の影響を受けます。体内時計は毎日の心身の活動を調整していますが、テロメアは細胞の寿命を調整しています。不眠などで体内時計の遺伝子が狂うとテロメラーゼの発現が低下し、テロメアが短縮することが明らかになっています。(*4)そのほか、心理ストレス、睡眠時間、運動、健全な食事、がテロメアの長さに関係していると言われています。瞑想でテロメアが伸びるという報告、睡眠に関しては、毎日5~6時間しか眠っていない人より7時間以上睡眠をとっている人の方がテロメアが長いという報告、運動習慣のある人はテロメアが長いという報告があります。(*5)

■現実的に「規則正しく」より「行動の定着」へ

これらの体内時計は朝起きて、日中働いて、夜眠る、という人類の祖先が長い年月をかけて地球で生き延びるために獲得したものです。しかし、近年の働き方やライフスタイルの変化に伴い、地球の自転による「昼夜」と体内時計の不一致が起き、現代人は知らず知らずのうちに体に負担をかけ病気になりやすい状態になっています。これは「社会的ジェットラグ(社会的時差)」として社会問題化しつつあります。(*6)しかし、現実的にライフスタイルを変えることは容易ではなく、「朝起きて、昼働いて、夜寝る」といった従来の規則正しい生活を追求するのは不可能に近いかもしれません。

そこで、実現可能な代替案として「行動の定着」を目指しましょう。特に就寝時間、起床時間は重要です。その時間をできるだけ一定にし、就寝中は光を浴びないようにアイマスクをして寝るなど、就寝中の「光」には敏感になりましょう。また、散歩や食事など定期的な運動が、正常な体内時計のリズム維持に役立つ可能性が明らかとなっています。(*7)

以上、体内時計と呼ばれる「中枢時計」「末梢時計」「細胞内時計」の3種類について詳しく解説しました。体内時計の理解が深まれば規則正しい生活習慣の重要性がよりわかるようになります。健康において「規則正しい生活」が重要なことは百も承知だと思いますが、ライフスタイルの時代的変化に逆行して規則正しい生活を維持することは容易ではありません。まずは、各々のライフスタイルの中で「行動の定着」を考えてみてください。

【参考文献】

1.化学と生物 2012: 11; 794-800

2.Folia Pharmacol. Jpn 2007: 130; 469-76

3.J. Am. Chem. Soc. 2010.

4.Cytogenet 2004: 152; 95

5.Eur Heart J 2013; 34:1790-9.

6.日本内科学会雑誌 2017: 105; 1675-81

7.心臓 2011: 43; 154-8

 

関連記事

  1. 実は怖い「体の糖化」老化を早め病を招く糖化物質《AGEs》蓄…

  2. 脂肪は健康の敵ではない!研究に基づいた「体にいい脂肪」の摂り…

  3. 「疲労物質=乳酸」はもう古い|「疲れ」はどこから来るのか

  4. 転倒や寝たきりの原因に!サルコペニアとフレイルの違いと予防ポ…

  5. 日本人でお酒に強いのは◯◯%!隠れアルコール依存症チェックリ…

  6. “正月太り”はウソ!?そもそも太りやすい人の行動と注意すべき…

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

一般内科診療・アレルギー疾患・アンチエイジング・予防医療・健康管理に関するご相談、お悩みがございましたらお気軽にお問い合わせください。

  • かぜ、頭痛、腹痛、めまいなどの内科疾患
  • 花粉症や蕁麻疹を含むアレルギー疾患
  • 高血圧・糖尿病・脂質代謝異常などの生活習慣病
  • 最近肌の老化が気になる
  • 体力が著しく落ちてきて心配
  • 健康に気遣い効果的に運動をしたい
  • 認知症の症状が気になる
  • 社員の健康管理が気になる

フォームからのお問い合わせ・予約

予約専用ダイヤル

03-6831-4558 予約電話受付時間: 平日10時~18時
(診療時間と異なりますのでご注意ください)
夜間・土日・祝日のお問い合わせ 03-6823-1409

現金、クレジットカード、PayPalによるお支払いが可能です。

  • VISA
  • mastercard
  • AMEX
  • diners
  • JCB
  • paypal

*保険診療:スムーズに御受診いただくために予約患者様を優先して診療させていただきます。
*自由診療:患者様一人一人に十分な診療時間を確保し、快適に過ごしていただくため、完全予約制で診療を行っております。

月曜日
18:00 ~ 21:00
火曜日
18:00 ~ 21:00
水曜日
18:00 ~ 21:00
木曜日
09:00 ~ 21:00
金曜日
18:00 ~ 21:00
土曜日
09:00 ~ 21:00
日曜日
09:00 ~ 21:00